2013年11月23日

ツイノベ001

001
酒に強い癖に、安いシャンパンで酔う。
心配だが密かな楽しみがあった。
なぜか甘えてくる。幼少期に戻っているのかもしれない。
瀬人「ぎゅーってしていい?」
克也「ちゅーは?」
瀬人「どっちもってこと?」 
克也「うん」 
瀬人「欲張りだね」
瀬人は克也を抱きしめてキスをしてきた…



城海 140文字。
このお題はセリフ以下が指定されていて、名前とシュチュエ―ションを決めるタイプでした。


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posted by ニノ at 08:24| 【遊】ツイノベ

2013年11月15日

海馬瀬人の思い通りにならない案件

 真新しい紙で指を切った。
傷は小さく深いが、血を絞り出し、皮膚同士をぴたりと止めてしまうと案外早く治ってしまう。
手近にセロファンテープしか見当たらなかったので、それで止めてしまった。
すぐに仕事を再開してしまったため、そのこと自体頭の片隅にも残っていなかった。

 午前中は会社にいたが、珍しく当日に担任に呼び出され学校へ行くことになった。
秘書達はすぐに制服を用意したので、問題なく登校した。
 用事はあっけなく終わり、肩透かしを食らった気分だった。
 担任というより、学校長の頼みごとだった。形として学校内で話したいという事情らしい。
 別段体育館の工事に金を出すのは構わない。
寄付、金壱億円等と書かれるくらいなら、KC寄進の方が面倒でないと伝えたら目を丸くしていたが。
 こちらも出席日数を金で買っているようなものなので、文句を言う気はない。
常々かび臭い体育館で行われる集会に顔を出したくないと思っていた。こちら主体で工事を行えば、卒業する前には新しくなっているだろう。
 特に興味のなかった高校の筈だった。
卒業という言葉が自然に浮かぶことに、笑った。


 秋にしては暖かい日だった。
 校内の銀杏はまだ黄色になりきっていなかったが、目の前を多色紅葉が通り過ぎた。
「海馬君!」
 大きな目を開けて近寄ってくる。午後は体育らしい。
「久しぶり、元気だった」
 いつも同じ言葉をかけてくる。 
 あの男がいなくなって、昔程苦手ではなくなった。
「あれ、ここどうしたの」
 気付くと左手を取られていた。
何だと目を向ければ今朝のテープ跡だった。視界が違うせいか目聡い。
「もしかして、ケガ?」
「ああ、紙で切った」
 遊戯には取り繕う方が面倒なことになると経験で知っていた。
ただし、保護者のように保健室に連れて行きたがる癖は阻止したいと思っていた。
「もう出血もしていないので大丈夫だ」
でもと言い募る遊戯を離そうとしていたら、他のお友達も現れてしまった。
「珍しー、海馬がいる」
「あ、ホントだ」
 本田と御伽の声がする。同意を得ようとばかりに、左手を上げられてしまった。
 オレは、社に戻りたいというのに。
「セロテープで止めた?けっこうワイルド海馬君」
 くつくつと笑う声がする。
 手を持ち上げているのが遊戯でなければ、無理にでも引きはがすのだが。それをすると、この小さい体に被害を与えてしまいそうだ。
本人には言えないが、モクバより少し大きい程度の遊戯に手をあげるのは、遠慮したい。
「遊戯と本田、今日当番じゃないか?ボール出しとかないと文句言われっぜ」
 意外な援軍にこちらが驚いた。
 2人は顔を見合わせると慌てて駆けて行った。
遊戯はこちらを気にしつつも本田に引っ張られていく。
「久しぶり、海馬くんっ!」
「そうだな遊戯…とは答えていない」
 なぜか遊戯の口調を真似する城之内に、げんなりとした気分になった。
 後ろの御伽は相変わらず読めない表情だ。
「学校で会うの久しぶりだから言ってみたかったんだよ!体育、出ていかないの」
 城之内が後ろからサブバッグを取り出した。見覚えのあるシューズが中から現れる。
「海馬と体育に出てみたいんだって、前に言ったら用意してくれたんだ。
午後から来るって連絡貰ったから。プールの更衣室近いからそこで着替えたら?」
 誰に言って誰が連絡をよこしたのか、オレのプライバシーはどうなっているんだと思ったが、頭を過る人物は1人で、凡骨に怒っても仕方がないという結論が導き出される。
 バッグを受け取ると良い笑顔×2で、待ってると返された。


 秋晴れの空の下、行われるのはサッカー。
ミニゲームを数度経て、チーム分けはできているらしい。
 2クラス合同なので4チーム(多少変動はある)、そこにオレをどう組み込むか教師は悩んでいると本田から聞かされた。身長の近い者で柔軟体操をとなると大抵組まされる。
 ……どこでも構わないと、背中を押されながらため息を吐き出した。
 着替えながら確認したところ午後の予定がすべて他の日に振り分けられていた。
 押される力が弱まったので、不思議に思い顔を上げると何故かこちらに視線が集まっている。
前屈・開脚で地面にぺたりと付いたせいか。城之内が声を出さずに『やりすぎ』と訴えている。
 オレから見ると、男子生徒は体が硬い者が多い。
運動部に所属していながら、あの硬さではケガをしないのだろうかと不思議に思えてくる。
 何も考えていないとセーブをするのは難しい。少しは今行っていることに注意を向けるかと心を改めた。
集合するらしく、立ち上がり歩き始めた。
 そして、今は何故か…本田が土をはらってくれている。
「気にしないんだな」
「汚すための服だからな。…手間をかける」
髪の上についていたらしい枯れ葉を取った本田が苦笑を浮かべる。
「服ならいいけど体はひとつだよ、海馬君!」
 遊戯が現れた。途端に賑やかになる。城之内も寄って来て、獏良、御伽も加わる。
白いタオルで凡骨が顔に付いた土をさっと拭った。
獏良が抱き付いてくるので、動けないオレを間にしてサンキュー本田と会話が成り立っている。
 当然この集団は悪目立ちをする筈なのだが、教師は無視と決め込んでいるらしい。
正しい対処だ。他のお節介な教師陣も見習って欲しい。

 組み分けは一先ず済んだらしい。30分ハーフのゲームを行う。
オレはお友達とは別のチームになった。
 自分のクラスはともかく、隣のクラスの者の名前はわからないが特に問題はないようだ。
背の高い者が少なかったせいで、キーパーになった。
聞けば半分以上はサッカー部員だそうで、教師なりのハンデがオレらしい。
『海馬君の所迄ボールが来ないようにするから!!』
 チームはなぜか一致団結しており、初めて…かもしれない、円陣を組みBチームファイト!と一緒に叫んだ。
 専用のスパイクを履いている訳ではないが、キーパーには一応と装備を渡された。
肘あて膝あて、キーパグローブを嵌めてゴールラインに立つ。
 近くにいた者が、ルールわかる?と遠慮がちに話しかけてくる。
 余り詳しくはない。キーパーに関して言えば、ペナルティエリア内迄は手を使って構わないというぐらいかと答えた。
 彼はゴールエリア近くで混戦になったら、できれば飛び出して空中でボールを奪って欲しいという。その時は自分がゴールに入るからと。
DFとして海馬君を守るからと言葉を残して、少し手前にあがっていった。

 試合はこちらが押していた。
前半はほとんどすることがなかったが、後半開始直後に相手チームが攻めてきた。
 高いパスが通ってゴール近く、ヘディングで押し込もうとした選手とボールの奪い合いになった。
DFがゴール内に入ったのを確認し、最初に指示されたとおり飛び出して空中でボールを掴んだ。
 同じチームの内2人からボールを寄越せと手が上がった。
マークされている方が相手ゴールには近いが、ラインぎりぎりを走っている。
もう1人はややセンター寄り。確実な方を選んでセンターの方にボールを投げた。
 その後もう1度、相手チームの攻撃は直接オレを狙ってきた。
戦法を変えドリブルでパスを回し、低いシュートを蹴り込んできた。
DFが邪魔で見えない。シュートしようとした男の前に立って、回転するボールを無理やり体で抑え込んだ。
 結果、Bチームは試合に勝った。
後半から相手チームのパスが通り易くなったのは、こちらのMFにチェンジがあったためらしい。

 授業終了が近くなり教師の前に集合し始めた頃、試合前に会話したDFが海馬君凄いと話しかけてきた。
グローブを外しながら聞いていると、空中で一瞬の判断でボールを繋いだり、混戦しているところへ飛び出し体で止めるということは、GKにとって難しい判断になるらしい。
 それから守れなくてごめんと言った。
 そんなことはないと返そうとしたところでいつもの面々が集まってきてしまい、彼の姿は見えなくなった。
「大活躍だったって?」
 へらりとした笑顔で城之内が寄ってくる。
「海馬君はハンデじゃなくて、最後の砦になってたよ。おかげで、もー、凄い点差」
 獏良は対戦したAチームにいたらしい。
 さっきのDFの名前を聞いた。隣のクラスでサッカー部。レギュラーではないみたいという答えが返ってきた。
「ほっそいからグローブとか付けてると余計に案山子みたいで、強いとは思われないよな。みんな凶暴な海馬君を知らないから」
 城之内が要らない説明をしている間、外した物をどんどん奴の手の上にのせていった。
最後に右のエルボープロテクターを取る際に、今朝止めたテープが剥がれた。
「あ」
傷が開いた。
 ん、と言って城之内が指に吸い付いた。
離そうとしても吸い上げる力が強くて外せない。
 お友達のおかげで周囲に迄は気付かれていない。
しかしオレにでも、この辺りの気温が下がったことがわかる。
「もう止まった」
 ほらと指を差し出してくる。
 城之内の強引なところはオレにも引けを取らないので、仕方がないと諦めて…やるものか!
サッカーに出たのは誰のせいだ。
 少し離れた場所に置き去りにされていたボールを右手で掴むと、凡骨の腹をめがけて投げ込んだ。
見事にど真ん中に入ったらしく、受け身も取らないまま後ろに倒れていった。
抱えていた装具が宙を舞う。
 教師や他の生徒には何が起こったかわからなかったらしいが、例のDFは見ていたようだ。
 それから校内で会う度に、たまにはサッカーをしない?と笑顔で話しかけられた。
KCの海馬瀬人という肩書よりも、サッカーの才能について語る辺りが他の人間と違う。
 これ以上色々絡んでこないで欲しい。
 オレは純粋な心の持ち主には強く出られないのだ。

「もてもてだねー海馬」
 やけに近くから声が聞こえるが、きっと無理に背伸びをしているのだろう。
「誰のせいだ」
 軽く背後を肘でつつくと、呻いて沈んでいった。
「まだ痣になってんだぞ」
 傷の治りの早い城之内のことだ。これはブラフだろう。
「そうか。今日は屋敷に戻るから一緒にどうかと思ったが、やめた方がいいだろうな」
「オレも今日はバイトないんだ!このぐらい大丈夫」
 素早く立ち上がり、満面の笑みを浮かべる。
今にも首に抱きついて来そうな気配だ。
「車が来るまで、待て」
車が着けられる駐車場の方へ歩き出した。
 待てって、待つけど、俺犬じゃないんだけど。
 城之内が呟く間に他のお友達…友人達が反対方向に帰って行った。
またねと手を振っている。

 車の中で城之内の体を確かめた。思ったとおり痣はほとんど残っていない。
「大胆で、うれしいけど」
 勘違いのバカが。こんなところで盛るものか。
「貴様の頑丈なところは褒めてやる。撫でるのと、撫でられるのとどちらがいいか選べ」
 場所はもちろん頭だと続けたところ、膝の上に倒された。
「海馬はオレといるの恥ずかしいの?」
「恥ずべきことはない。だが学校では接触を少なくして欲しいとは思う」
 髪を撫でていた手が止まる。
「接触って、触るなってこと?」
「…まあ、そうだ。他の友達と同じ距離でいてくれ」
 城之内は無言のままだった。
もしや泣くのかと思ったが予想もしない言葉が降ってきた。
「じゃあ、何かサイン決めよう!ハンカチを振ったら屋上とか」
 論点がずれている。仕方がない。本音を言うしかない。
「オレがいると浮かれているのは、どうにかならないのか」
「へ。……どうにかしないとまずいの?」
「オレにばかり集中しているせいで…無意識でなければ、人の指を舐めたりしないだろう」
 舐めたどころか、指の血を吸い取った。
「この腹のって、それに怒ったから?!」
「当たり前だ!お友達連中でも引いていたぞ」
 今迄気付いていなかったのかと思うと、情けなくなってきた。
説明が必要な程だったとは。
「海馬は恥ずかしかったのか」
 声のトーンが低いのが気になったが、ああと答えた。
「…なんとかする」
 どうも城之内を落ち込ませたようだ。
「顔も、触っていい?」
 頷くと不安げな瞳とかち合った。
「何か理由があるなら聞くが」
「オレって、好きな子は守りたいタイプだったみたい」
 はは、と笑いながら頬を撫でていく。
 男はそんなものではないだろうか。
ああ、守られる対象としては…オレは不適格だな。
「いいのか?」
 耳や髪を撫でていく指が優しい。
選択肢を与えるようなことを言いながら、手放す気持ちはなかった。
「いいんだ。海馬が好きな子だから。気を付ける」
 その不器用な科白に顔が熱くなるのを感じた。
 海馬?という声が聞こえたが、恥ずかしくなって目を閉じた。
 
 部屋に入ったら、オレも同じタイプだと告白してすっきりしよう。







**********友人達による蛇足的考察**********

「海馬君て、面白いよねー」
 2人が見えなくなってから獏良が話し出した。
何がと話の見えない遊戯の後に、御伽がそうだねと返す。
本田はあれでうまくいってるからいいんじゃねと笑う。
 遊戯はこの前のサッカーの話と言われて、流石に理解した。
「城之内君は、アニキだから仕方がないんだって言ってた」
 大切な相手を守るのは、無意識。
「あーだからか。2人ともアニキだから暑苦しいのか」
 主導権争いっぽいところもあるかも…と誰かが言った。
「それって、言ってあげた方がいいのかな?」
 遊戯の言葉に3人はそれぞれ考えたが、ほおっておいて構わないんじゃないかということになった。
 問題が起こったら一緒に考えるぐらいはしてやる、と家では弟の本田が笑った。

 努力する城之内に気付くのは、また別の話。


  END    20131115/1222


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posted by ニノ at 14:18| 【遊】SS

2013年11月10日

青い鳥 

青い鳥  <社長室にて別Vr.>

 抱き合ってから数分。
 今晩は軽く酒が入っていたせいか、海馬が早々にダウンした。
 シルクのローブを着せてやろうか迷ったが、健やかな寝息をたてていたのでそのままにしておいた。
額や背中の汗と、腹の上に散ったものは拭ったから構わないだろう。
 軽くシャワーを浴びて、戻ってもそのままだった。
 動かしたらきっと起こしてしまう。
 城之内は横になりシーツを掛けながら、長い睫毛が揺れるのを見ていた。たまには寝顔を見ているのもいいだろうと、自分の欲望を封じ込めた。

 数十分経過。
 いっそ一緒に眠れたらよかった。なぜか目が冴えている。
目の前に相手がいるのに、触ることのできない状況にそろそろ限界がきていた。
 普段は覗くことのできない、茶色の髪と同じ色の眉毛と睫毛。
髪は柔らかくも硬くもなく、しっとりとしている。白い肌はつるりとして、光る産毛は金色。
高く通った鼻筋に、意外と小さな口。桃色の薄い唇は触れると驚く程柔らかい。
整った顔だなと改めて思っていた。
 そのためか、数日前に読んだ文章を思い出した。
『生きている芸術品』海馬がそう称されていた。
〈ただし黙っていれば〉なんて注意書きが付いていただろうか。
写真はビジネスでの強さを纏った笑顔だった。
デュエリストの片鱗も覗かせない。
 例え罵詈雑言でも話している海馬がいいのに、記事を読んで城之内は思った。
動いている海馬瀬人の良さがわからないなんて。
オレのために笑ってくれることなんて、なかなかないけど。
そんな笑顔とは違うんだ。

「なんでこんなに海馬のこと好きなのかな」
「オレに聞いているのか?」
「ふえっ、声に出てた?!」
「さっきからずっとな」
 ゆっくり瞼を開くとぼんやりとしていた。方向は定かでないまま海馬は言葉を放った。
「じゃああの」
「ムカツク、も聞いていた。ひとつあげるたびに最後に付けていたが、貴様は女子高生のようだな」
「オレもおまえも男子高校生だろっ。普段から老けてんだから、オヤジ臭いこと言うなよ」
 寝起きのとがった気分のまま(何しろ煩くて起こされたので)、城之内の表情を見ようと顔を向けた。
言語中枢より視覚の方が目覚めが遅いらしい。
「………」
「あー、あー、訂正します。落ち着いて見える」
「ほう」
「なんで素で女王様みたいなんだろうな」
「…王ではないのか」
「海馬には、ひれ伏すじゃなくて、かしづけ、ひざまづけって感じがするんだ。
 王様はやっぱりアテムだろ。あの威圧感」
 やっと捉えた表情は、なぜか他の男を称えていて腹立たしかった。
「国語は点が取れると言っていたのは勘だけか。
では遊戯のところに行くか。オレもデュエルがしたいしな」
「もう、今の遊戯は遊戯だろ。オレとデュエルしよう!」
城之内は首元に腕を回して、軽く唇にキスをした。こめかみあたりに触れてから茶色の髪をすく。海馬の顔を見たかった。
「ふぅん。勝てる見込みもない筈だが、凡骨の意地を見せる気か」
「うん。なんで女王様かわかった。目付きがやらしいからだ。人の反応見て楽しむところあるよな。
もっと泣きわめけー、死んでしまえっ、みたいな表情してるとき、あれがいやらしい」
起きてくれたのが嬉しくて、つい饒舌になってしまう。
「デュエルの話をする気はないのだな」
「デュエルしてるときのおまえの話だけど?」
「何だと」
腕の中の体が瞬間強張ったが、気にせず話を続けた。
「そうそう、オレはあれにやられたんだ。あの妙な色気。
 昔は勝負しろって言っても全然相手にしてくんなかったのに。
急に付き合ってくれるようになったな、そういえば」
「…気分が変わることもある」
 無駄とわかっていても海馬は少しだけ顔を背けた。髪から覗く耳の先が赤い。
 今の話のどこに引っかかったのかは、別の機会に聞いてみようと城之内は話を続けた。
「デュエルするたんびに、ラブレター貰ってただろ。
TVで放映したりするとさ。
言葉わかんなくても、Kaibaって綴られてるのはわかるから。
その前後に何度も同じ言葉が続くとさ、好きですって書いてあるんだろうなーって。ゴミ箱の読んじゃった」
「ちょこまかとネズミか」
 …実験は付けなくていいんだ、と城之内の動きが止まった。
 それを見抜いた海馬は付けて欲しいのか、と、声を出さずに笑った。
 腕の中の体が揺れる。笑顔を見たくて強引に体ごと向き合うように引き寄せた。
「あれを愛称だとか言うなよー、まじへこむ。泣きたくなる。
そんなことを言うおまえは鳴かせてやる!」
「…何が楽しいのだ…」
「普段澄ましてるからかなー。今みたいな、拗ねてる表情もいいな」
「拗ねる?」
「気付いてないんだ。伏せ目がちで睫毛が半分くらいかかってて、口元ぎゅってして斜めを見てる」
「…そうか」
 それ以上見せたくなくて、金色の髪の肩口に顔を埋めた。

 城之内の乾いた掌が頭や背中をゆっくりと撫でていく。心地良くて眠りに落ちそうになった。
 癒しの手だ、そんなことを思ったが伝える気はなかった。
「オレは近くにいないと落ち着かない。いつでも触りたい。触らせてくれるから好きだ」
 うっとりとした声に引き戻され、意識を浮上させつぶやいた。
「しばらくしたら側にはいられないと思うがな」
「何それ」
揺すられて、更に覚醒する。
「言葉どおりだ。学校を出たら接点はないだろう」
「海馬どっか行っちゃうのか」
 城之内の体の下に敷きこまれ、強い力で縋り付かれる。首元に冷たい水の流れを感じた。
「簡単に泣くな。元々どうして貴様といるのかわからないぐらいだ」
「楽だって言ってた」
「何?」
「オレといると、ほっとするって」
「そんなことを言った覚えはない」
「寝入るときに、たまに。オレの頭を撫でてくれることもある。無意識なんじゃないか」
 顔の上に塩辛い水滴が落ちてくる。感情のこもったそれは、自分がなくしてしまったもの。
「オレは、人を好きになるという感情がよくわからない。わからなくしたのかもしれない」 
 まだ大切はわかる。城之内には幸せになって欲しい。
「城之内…おまえは、オレと違う。
 人の輪の中にいる。すぐに誰とでも仲良くなれる。
本気で他人を心配する。それがおまえの生き方だと思う。ずっと一緒にいられる相手を探せ」
 裸の肩を鷲掴みにされて、痛みに海馬の顔が歪んだ。
「勝手に決めんな!オレはおまえがいい」
 力なら海馬の方が上だ。不自由な体勢から城之内の腕をほどき、体の下から抜け出した。
 サイドテーブルの上にあったローブを羽織ると、水差しからグラスへ注ぐ。
一息に煽ると喉が乾燥していたのがわかった。
 目の前の男の分も注いでやり、ベッドに座り背もたれに寄りかかった。
 グラスを突き出すと受け取っておきながら逡巡している。
城之内のそんな素直さが面白いと思っている。
 決心が付いたようで飲み干すと、だいぶトーンダウンして話を続けた。
「海馬は大学行くのか。それ、日本じゃないのか」
「まだ決めかねている」
「教えてくれる気があるのかないのかどっちだ」
「聞いてどうする。入学できる訳がないだろう」
 話の方向性が見えないことに、苛立ちを感じた。
「あ、やっぱりどっか学校に行くんだ。それなら働き口なんていっぱいある」
「何を言っている?貴様の生活はどうするんだ」
 城之内は真っ直ぐに海馬の目を見た。
「オレ、自分がこんなに執着を持つ奴だって知らなかった。
かっこ悪いのはわかってる。…ってか気持ち悪いよな。
でも海馬と一緒にいたい。海馬が帰ってくる場所になりたい。
海馬にオレをあげる。全部あげる。
海馬はちょっとでいいから、オレのこと考えてよ」
 
 頭が真っ白になった。
真剣な言葉に何と答えたらいいのか、海馬にはわからなかった
 プランがなかったのはオレの方だ。
城之内と約束ごとを交わそうと、考えもしなかった。
KCの未来など己の力で切り開けるものに意識が向いていた。
 春から高3で、城之内との付き合いも1年間かと漠然と思っていた。
 その後城之内の隣には誰かがいて、笑いかける。誰かの親になる。
そこに自分はいないのだ。仕方がないのだと諦めていた。
 ……諦めていた……?
 頬の上を何かが滑っていった。
 ゴメンとしきりと城之内の声がする。
 五月蠅い、煩い、うるさい、オレのことなどほおっておけ!
声には出さなかったが、城之内から見えないようにシーツで身をくるんだ。
 感情から溢れる涙など、とうに枯れていると思っていた。
もう嗚咽が漏れて隠しようがない。
「…海馬?」
 頭に掛かっていた布を持ちあげられて、ローブの袖口で拭われた。
 城之内はもう泣いていなかった。にこりとした笑顔が腹立たしい。
「抱きしめてもいい?」
 普段尋ねもしないくせに、何を今更と海馬は思った。
それは聞かれなくても、側にいて気にならない存在であるということ。
「だって今のおまえ、暴れるか口聞いてくれなくなるかの、どっちかっぽいんだもん」
 あまりの内容に異を唱えたくて、どちらでもないと首を振り、海馬の方から背中に手を伸ばした。
けれど決壊した涙腺は確かに暫くそのままで、話すことはできなかった。


 海馬にとって、今日が休みで良かったと心の底から思ったのは初めてだった。
そろそろ遅めの昼食をとろうという時刻になっていた。
 瞼の腫れがようやく引いた。冷やしたり、温めたりと交互にタオルを替えたおかげだろう。
 朝方迄タオルを替える作業を繰り返して、碌に睡眠もとらずバイトに行ってくると出掛けた男は、メッセンジャーの役目を果たしていったようだ。
そうでなかったら、モクバが朝食に現れないのを心配していただろう。
 少し緩めの白いシャツにカーディガン、ウールのパンツで、鏡を後にして大きく伸びをした。
 窓の外の空が青かった。


 夕べ何か決めごとができたわけではない。
 お互いが大切な存在だと気付けただけだ。

 他では替えがきかないと、海馬がわかったことは大きな進歩だと城之内は思った。
 運河沿いの道で前後左右に人がいないのを確認すると、恥ずかしかったー!!と川に向かって叫んだ。
 …だって、オレがあんなこと言われたら……引くよ。
 ストーカー行為します宣言だったよな?
 海馬が普通じゃなくて良かった…。
 城之内は幸せをかみしめていた。
 海馬に触れると癒される。だから一緒にいたい。
それを続けるためには、計画が必要だろう。高校卒業迄1年。進路は本来なら決まっている者が大半だ。
 何をすれば、ワールドワイドな海馬サマと行動できるだろう?
海馬が自覚してくれたから住まいは童実野町のままでも構わない(団地は脱け出すけど)、むしろ動かない方がいいんだろうか。
海馬邸関係で働くと主従になってしまうので、避けたかった。

 夕暮れ時、目指していたケーキ店を発見した。モクバが好きな店だった。
誰の誕生日でもないけれど、奮発してホールケーキを土産にしたかった。
 海馬はモクバに打ち明けただろうか。
意外とオレよりぎりぎり迄悩んだりするんだよな。私生活についてだけだけど。
 勝手にサプライズ!でもいいか。
オレもおまえのアニキになるからって驚かしてやろう。 
 そして兄よりしっかりした弟に、人生設計を一緒に考えて貰おう。
 海馬邸の夕食迄1時間。デザートタイムはその後だ。



 
  END 20131110
/1116/1120/1220改定




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