2013年10月27日

深夜 3

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 城之内は膝の上に乗ったまま、上着を脱いだ。
「海馬の目って、やっぱりキレイだ」
「貴様の色も変わっているぞ。琥珀色だ」
 黙らせる為に唇にキス落とす。
 少しだけ身体を離すと海馬の腰辺りから衣服をたくし上げ、晒された胸に互いの素肌を合わせた。
それだけで支える背中がびくびくと跳ねたが、強く抱き締めて耳元に言葉を流し込んだ。
「今度はオレが話したいんだから、聞け」
震えていた背中を片腕で支え直すと、形のいい耳に手を添え、顎を傾けながら瞳を覗き込んだ。
「最初はさ、絶対気が合わないと思ってた。全部嫌いだと思ってた。
でも今は逆なんだ。
目の形も好きだ。強い眼差しで睨まれると怖いけど。その長い足だって嫌いじゃない」
光を受けて輝く青い瞳を覗き込んでから、頭全体を引き寄せて抱きしめた。
「あのさ、今迄引かれそうだから言ってなかったけど、オレはおまえの全部が好きなんだ。
頭が良くてずる賢いところとか、人を見下してるところとか、そういうのだって今は海馬の一部なんだって分かってる。
オレのことをバカで仕方がないと思ってるのも知ってるけど、それだって海馬の考えだからいいんだ」
「城之内?」
「くすぐったがりだとは思ってなかったけど、他人に触れられるのが苦手なのは知ってた」
 頭を離して城之内が笑った。その顔が赤いのは日差しが熱いせいではない。
「オレの観察眼をなめんなよ。握手が嫌そうだな、ハグは最悪だって思ってるんだろうなって」
 見つめあったまま膝の上から下り、海馬の膝に手を添えて震える足を伸ばしていく。
首の下に腕を回して支え、上半身を一緒に横に倒した。
「ポーカーフェイス、してるつもりなんだろうけど目の色とかでばれてんぞ」
 渋々城之内の腕に頭を乗せた海馬が、息を飲んだのが分かった。
いつもより大きく開かれた目が続きを促してくる。
 -------やっぱり目がぴかぴかだ。たまに見せてくれるその表情が好きだなんて言ったらぶっとばされるかな。
 オレ相当恥ずかしいこと がんばって言ったんだけど、そっちの反応はなしか…
「なんて、ね。オレは海馬の目を見てんの好きだから知ってるだけ。多分そんなにばれてないと思う」
 からかわれたと分かった青い瞳に、怒りの色が浮かんだので、すかさず裸の胸を密着させた。
腕の中の身体が大きく跳ねる。
「触ってもいい?」
 うぅという唸り声の言葉にならない返事の替わりに、海馬の腕が背中に回された。


 何もせずにこの家から出ることは叶わないのだなと、海馬は嘆いていた。
 処世術として身につけた体の声を暴かれ、知らず本音をさらけ出すことになる。
度重なる解答ミスは城之内といる時だけで。それがどんなに汚い事でも馬鹿げていても、あきれないでいてくれる。
 いつからこの男に魅かれる様になったのか。
 城之内の舌が首筋から脇腹を下りていく。空いた手は逆の方向へ上ってくる。
正しく、触りたいらしい。震えが止まらない。
「ふっ…」
上がる声を抑えようと押し付けた目の前の肩に、他の皮膚とは違う部分があった。白くてうっすらと盛り上がっている。微笑してから唇を押し付けると、ひゃっと甲高い声があがった。
「そこ、感覚変だから触らないでって」
傷跡。城之内から非難の声があがる。
どこもかしこも反応してしまう己に比べたら、うらやましいかぎりだが…、城之内のもたらす刺激に思考が麻痺していくのを感じていた。
意識が混濁する前に言葉を紡いだ。
「城之内、オレは10時には出たい」
強い声で口にすると、胸の上で琥珀の瞳が頷いた。


 早朝のまだ冷えた部屋に熱気を与えるのは、2人分の呼気と汗。
 今迄触れられたことのなかった二の腕の付け根に舌を這わされ、海馬は目を開けていられなかった。
そんなところで感じている自分の姿を見たくなくて反対へと顔を背けた。
震えを耐えて奥歯を噛みしめると唾液が漏れ落ち、声を我慢した分頬を伝う涙とで、シーツが濡れていくのがわかった。
 城之内は腕から顔を上げて、そっと海馬の頬にキスをした。
瞼がゆっくりと開かれていく。
「ここ、触るのいや?おまえが嫌がることをしたいわけじゃないんだけどな」
 城之内は全ての動きを止めていた。
 双丘の奥に這わせた指はもう3本目迄入っていて、残った掌の中にはぬめる臨戦態勢のお互いを捕らえている。
「防音悪いのは、分かってる。でもそこ迄泣かれると…」
 続く言葉は少し起き上がり、苦笑を浮かべた海馬の口内へ消えた。
「平気だ。慣れない、だけだ」
 ------羞恥を城之内のせいにしようとしたのは自分だ。体の方がよっぽど素直で呆れる。
 更に体を起こすと、城之内の屹立したものに手を添え導いた。
 片脚を高く上げ残った腕と腹筋で城之内へと近付く。腹に力を込めると抵抗してしまうので合間に深く息を吐くと、ゆっくりと飲み込んでいくのが見えた。吐き出す息と共に掠れる声が聴こえていたが、もう気にはならなかった。
 最後に隙間がない程密着したのを指先で確かめると、ほうっと息が漏れた。そこに手の平が重なった。
 不思議に思って視線を上げると、首の辺り迄真っ赤になって唇を噛み締めている顔が目に入った。
「好きなんだろ、こういうの」
 濡れた顔を強引に拭うと、言葉を続ける。
「いつも言うじゃないか、エロいだったか…」
 腰を強く引き寄せられ、言葉を続けられない程頭が揺れた。
 同時に最奥に温かいものが流し込まれたのを感じて、知らず熱い吐息が漏れる。
「あぁ、もう。海馬ぁ」
 城之内から非難の声があがったが、理解できかねた。
「良かっただろう?」
 相変わらず赤い顔をして、低く唸っている。
「おまえ反則だよ。一緒に気持ち良くなりたいに決まってんだろう」
頭を引き寄せられて、ぼそりとつぶやかれる。
 -------ぞくりとしたものが背中を這い登っていくのが分かる。同時に中の城之内も締め付けてしまった。オレは、嬉しいのか?

 海馬の顔にも火が灯る。それを見せたくはなくて、目の前の首筋に噛み付いてみた。大きく城之内の身体が揺れて、体内でまた力を持ったのがわかった。
 -------なんだ。こいつも十分敏感ではないか。
「瀬人。オレんちだけど、手加減なしでいいってことだな」
 いつの間にやら頭に血が上り切ったらしい城之内に、両足を肩に抱えあげられ引き倒された。そんな様子がおかしくて、だいぶ気持ちに余裕ができた。そうだな、1人で盛り上がるのは寂しいか。リップサービスでもしてやろう。瞳を見つめて、言葉を紡いだ。
「愛してる。克也」
 城之内はしばらく視線を合わせて固まった。
 大好きな青い目に映る自分の顔。初めての言葉。
 その唇に吸い付いて舌に触れたくて、一緒に高みを目指したくて、激しく腰を打ちつけた。
「あっ、んんっ…かつ、やぁ」
海馬の屹立したものも手で擦りあげ、粘着質な音だけが部屋を支配していた。
もちろん、温度も。
青い火の玉が大きく立ち昇り、消えて行った。


 全身が融解してひとつになった気がする。
城之内とすると、そんな気分になると海馬はぼんやりと考えていた。
 お互い息が上がったまま抱き合っていたが、城之内が海馬の中から抜け出そうと動いた。
 抜かれる一瞬は体が震える。続いてどろりとしたものが流れ出て、海馬は無意識に体を丸く縮こめて、そのまま目を瞑っていた。
 しばらく後バタバタと大きな足音を立てながら、城之内が部屋に戻って来た。
「瀬人っ?大丈夫」
 -------何についてだろうか。主語がないから分からん。身動きしていなかったからか。
纏まらない思考を巡らせてみるが、城之内の視線の先は、下半身にあるようだった。
腹の上に散ったものと、中からあふれている体液。多分これのことだろう。
「これで上は拭いて。その体勢のままでいいから。下はオレがする」
 海馬が温かいタオルを受け取ると、城之内は海馬の中に指を入れた。
「いきなりなんだ。シャワーを浴びる時に自分でする」
「シャワー?出るわけないじゃん。まだ電気復旧してない。風呂場に行ったら、寒くて凍える。だからここでする」
 城之内は水を浴びてきたようだった。腕が冷たかった。
 ガスコンロで湯を沸かして、タオルは温めたらしい。そこ迄準備されると反対するのも面倒になってしまう。
 後始末をすると興ざめするなと海馬が呟けば、おまえが悪いんだろっと声を荒げながら、中に入っている指を大きく回転させた。
 驚きに声を上げそうになったがどうにか収め、視界に入れないようにしていた城之内の顔を見ると、また赤くなっていた。
「城之内?」
「なんで、暴走すんだよ。勝手に動くから、こんなことになるんだろ。ゴムつけようと思ってたのに。」
 お湯でないんだからさーと口を尖らせながら話す城之内は、怒って赤くなっているらしいと気付き、海馬の笑いを誘った。
 おまえの笑いのツボって、ホントわかんねーと呟きながら、城之内は作業を続ける。
「最後、これで顔とか頭とか拭く!目瞑れ」
 言葉は命令口調なのに、全く威厳が感じられない。海馬は小さく笑いながら、身を任せた。
 きれいなシーツに敷きかえられたベッドの端に、タオルケットでくるまれながら温かいコーヒーカップを渡され座っていた。
 ふと思いついて尋ねてみる。
「普段から克也と呼んでやろうか」
 髪を拭いていた手が止まる。振り向くと、目と口が大きく開かれたまま固まっている。呼吸をしていない様だったので、軽く顔を叩いてみると、そのままずるずると床に座り込んだ。
「うれしい、超うれしいけど…やっぱダメだ!!
 おまえエロいんだもん。思い出しちゃうじゃんか!!」
「バカが…」
 カップの底で黄色い頭をコツンと叩く。
「そだ、瀬人って呼んでいい?」
「勝手に呼んでいるだろ」
「普段も。呼んでいい?」
 海馬はぐっと息を飲んだ。
「学校以外ならかまわん」
 城之内のお友達連中に、詮索されるのは避けたいところがあった。
気付いているのだろうと薄々分かってはいるのだが、見せびらかす趣味はなかった。
「なんで?みんなにも瀬人って呼んでもらえばいいじゃん」
「皆とは遊戯達のことか。何を期待している?」
 城之内はきょとんとした顔のまま、海馬を見上げていた。
自分でも何かを考えていたわけではなかった。何となく'海馬’より親しみ易い様に思えて、他の人もそうではないかと思っただけだった。
「ごめん。特に何かじゃなかったみたい。今迄通り2人の時に呼ぶ。服持ってくる」
 海馬にとって打算なく近付いてくる城之内の様な存在は初めてだった。
 -------だから魅かれるという訳か。
「面白いな、城之内」

 昨晩と同じく、コートまで着込んだ海馬は迎えの車が来るのを待っていた。
アパート前迄は入れないため、連絡を待っているそんな時だった。
城之内は提出する課題を鞄にしまい、制服に着替えていた。
 首に付けた噛み跡はどうなっただろうか。海馬は好奇心で後ろから抱き込んでみた。
「な、何?!」
歯型はくっきり赤く残っていた。首筋というより、肩の付け根辺りに。
カッターシャツを着ていれば見えなくなりそうだが、なぜか城之内は着ていなかった。
気付いていないのだろうか。
「これは、見えても構わないのか」
「え、あー、今シャツ全部洗濯籠なんだよ」
 学ラン脱がなきゃ見えないと思うからさと笑う城之内だが、そんなことはすぐに忘れてしまいそうで、今日は体育の授業があるのかと問いただす。
「今日は…ない」
「ではこれを巻いていろ」
 海馬は城之内の首にマフラーを、正しくは結びつけた。
「それなら外れん。学校指定のシャツくらい買ってやる」
 スーツの胸ポケットから財布を抜き出すと城之内の掌に千円札を6枚持たせた。
カードでは買い物ができないと言われたことがある為に、最近は少しだけ現金も持ち歩いている。
「夕べの貴様ではないがな、他人に見せる必要のないことで勘繰られるなど避けろ」
 勝手に見てしまったスマートフォンの予定のことだろうと、城之内は黙って金を受け取った。
 背中に体重をかけて視線を上にあげると青い瞳がそこにあった。
「昨日は付いてきてくれてありがとう、瀬人」
 やや苦しい体勢のまま軽く唇を合わせると迎えの電話が入った。
 海馬が車に乗り込むのを見届けてから、学校への道へと向ったが思い直して商店街に寄ることにした。学校指定のシャツを買うために。
 この真っ白いマフラーの方が、海馬を連想させるんじゃないかとは流石に言い出せなかった。

                    
  END    20131027


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posted by ニノ at 21:35| 【遊】お題_18

2013年10月25日

深夜 2

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 課題の穴の開いた部分を埋めて貰って、どうにか提出できる物にまで仕上がった。
 昔は公式を書き解けと言っていた海馬だったが、最近では時間のムダと諦めて答えを書いてしまっている。留年しなければいいだろう程度に思っているらしい。
 おかげで海馬作問題集が用意された。色々言いたいことはある…が、それはまあ別の話として。
 教えることをやめてくれたおかげで、コーヒーとスクランブルエッグとサラダの簡単な朝食を用意して、食べられる程度の余裕ができた。
 パンを持っていくと、炬燵布団を肩まで掛けて背中を丸くしていた。
「寒い?」
触れた足は確かにひんやりとしていた。電気はまだ復旧していないらしく、暖まる筈もなかった。
「下から手を突っ込むな。まだ炬燵が出ているくせに、なぜオレは短パンなんだ」
「おまえの足が長すぎるからだよ」
「何を言っている?」
 海馬は本当に分からないという顔をした。
 オレが履くと膝下丈のハーフパンツなんだけど、という言葉を城之内は飲み込んで、大きく息を吐き出した。
Yシャツを脱がせてパジャマ代わりに着せたパーカーも、よく見ればだいぶ袖丈が短い。
「今度屋敷から服も少し持って来よう」
 その言葉にようやく合点がいった青い瞳は一瞬大きく開かれ、コクリと頷いてコーヒーカップを見つめていた。


 いただきますと挨拶をして、正座をするとフォークを取った。
「食事はこうでないと食べた気がしないと、いつも言っているだろう」
 なんで正座と笑う声に答える。
「礼儀正しくていいと思う」
「では貴様もそうしろ」
「オレはこれじゃないと落ち着かない」
 城之内は胡坐をかいていた。
「会食の為には慣れたらどうかと思うが」
 ここまでで、お互いに半分程食べていた。
「オレをそんな席に連れてくの?」
 ひどく真面目な表情で問われて、海馬は飲み込もうとしたパンを詰まらせた。ドンドンと胸を叩いても流れていかず、苦しんでいると脇から水の入ったコップを差し出された。
 どうにか流し込んで、呼吸ができなかったせいで浮かんだ涙を指で拭っていると、城之内の目が光ったのに気が付いた。

 涙ぐんだりと弱っている表情が腰に来ると言われたことがあるが、朝からSEXをする気はなかったので立ち上がりかけたところへ、がしっと肩を押さえつけられた。
「オレも『密会』に連れて行って欲しいな」
 人は予想をしていない言葉には反応が遅れてしまう。
「予定を見たのか」
「悪い。たまたまそれが立ち上がっちゃって」
「貴様は思ったより器用だな」
 ロックを外せたことにたじろいだ。
「指の動き、見てたから。海馬が何かを触っている時の指の動きがきれいだなって思って、みとれてたんだ」
 耳に口を近付けて、言葉を直接吹き込まれる。城之内は知っている。耳と首筋が弱いことに。低めた、その声にも。
「今日って仕事じゃないの?」
 べろりと舐め上げられて、膝を着いた。
「午後からの予定だ。
 貴様こそ出席日数が足りているのか。そのための課題ではないのか」
「オレも午後から行けば大丈夫。体育だけはばっちり出てるから。瀬人君仲良くしよう」
 脇腹から首筋まで撫で上げられて、ぞくぞくと震えている間に首の付け根に吸い付かれた。それでも肩を押して抵抗すると、両頬を掌で押さえられ、視線を固定された。
「オレは隠し事できないから浮気したらすぐばれるだろうなー。でも瀬人君はうまいからさ、平気で嘘つくだろ。誰と会うの?教えて欲しいな」
 どんっと鈍い音が城之内の鳩尾の上で鳴った。
「さっきから君付けで呼ぶのをやめろ!気味が悪い甘え方をするな」
 海馬が叫ぶより、城之内の動きが早かった。
服の上から股間をぎゅっと捕まれて、痛みに目をつぶった隙に片手で両腕を捕まれ上半身の服を一気に剥ぎ取られた。
「甘えてねー。怒ってる。密会って何だよ」
 焚き付けてしまったらしいと気付いた時には、遅い。今日は後手に回りすぎだ。
「枕営業とかやってんのか」
 腰をわしづかみにされ揺さぶられ、右の乳首に噛みつかれた。違うという言葉を発する変わりに、ひっという叫びが口から漏れていく。

 脱がされて寒いと訴える身体に火が点けられる。両の乳首を弄られて、声を上げないよう両手で口を塞いだ。いつから感じる様になってしまったのかは分からない。
 もともと触れられると、くすぐったくなる性質だったために人との接触を避けているところがあった。
それが逆にいけなかったのかもしれない。城之内がもたらす刺激に過敏に反応してしまう。吐息や落ちてくる毛先にさえも。
 右も左も丹念に舐められ、立ち上がった先を犬歯で噛みつかれる。声を抑えているせいで、涙が浮かんできて余計に煽ってしまう。ここで声を上げるのは嫌だった。仕方なく片手を離して肩を掴み、頭を振ると、やっと顔を上げたが指の動きは止めてくれなかった。
「ああ、ここは嫌なんだっけ。…オレの部屋ならいいの」
その言葉に頷いたが、今度は涙を舐め取るのに夢中になったらしい男には届いていない。
 そっと金色の後頭部に指を差し入れ、軽く引くと口を塞いだ。一瞬怯んで逃げ腰になった舌を、追いかけて吸い上げる。舌の裏や歯の裏をなぞると、胸の上の動きが止まった。
柔らかい唇の裏を食む様にすると、腕が下がったのがわかった。
角度を変えて更に深く絡め取ると、びくりと肩が跳ね上がり、背中にすがる指を感じた。顔を少し離して、立てた片足で崩れる身体を支えた。
城之内はキスに弱い。そう互いの弱いところなんて、知り尽くしている。
「少しは、話を、させろ」
 2人とも顔を赤くして、額に汗を浮かべながら、荒い息のまま立ち上がった。


 城之内の部屋に移って、ベッドに潜った。
 海馬は城之内の腹を軽く撫でた。
「痛むか」
 少しばつの悪そうな表情で首を振ると、城之内がごめんとつぶやいた。
「オレ、ちょっとうれしかったんだよ。おまえに安心されてるって知って。でも夜中にあんなの見ちゃったから、訳がわかんなくなっちゃって」
 海馬は次に続ける言葉に悩んでいた。
 説明の順番次第で、またこの男のスイッチが入りそうだと警告音が鳴っていたからだ。
サイズが合わなくても服は着てくるべきだったとも後悔した。それだけ混乱していたということかと、自嘲気味に笑った。
「何笑ってんだ」
「貴様にではない。自分にだ」
 大きな目を開いて首を傾げていたが、距離を取ってから海馬は話し出した。
「オレの、声がでかいと言ったのは貴様だろう。居間は廊下に近くて落ち着かない」
ぽかんとした表情で聞いていたので、続きを話すことにした。
「貴様が…オレを泣かせるのが好きなのは知っているが、この家ではやめてくれ。普通に我慢するだけでも勝手に泣けてくる。他人に聞かせたい程悪趣味ではないだろう」
やっと何のことだか分かった城之内は顔を赤くした。
このままだと飛びついてきそうな気配に先んじて、軽く触れるだけのキスを落とすと、俯いて黙った。

 さて、ここからが本題なのだがと海馬は深く息を吸い込んだ。
すがりつかれないように城之内の身体を縦にして後ろから抱きこんだ
「密会は…オレが1人で過ごす時間だ」
「え?」
「自分の行動や思考を振り返る」
「なんでそれが密会なんだ」
 顔が熱くなってきたのを感じながら、平静を装って説明を続けた。
「思い付きだ」 
「は?」
「単に設定上の色が気にいっただけで、言葉に意味はない」
 言葉のインパクトが強すぎて、城之内はスケジュールの色等まったく思い出せないでいた。
「薄い青にシルバーがかったカラーだ。またブルーアイズだと言われるのが嫌で…」
 語尾は金髪に顔を埋めた為に掠れて消えた。
 海馬には身体を合わせることより、真情を吐露することの方が恥ずかしかった。
 黙っていると栗色の髪に手を置かれて、撫でられた。不自由な態勢から城之内が手を伸ばしていた。
「わかった」
 背中の温度が高いのは十分伝わってきていたので、追い打ちをかけようとは思わなかった。ただ、笑いが込み上げてくるのを止めることはできなかった。
「おまえがおかしくて笑ってんじゃないよ。オレ達って、まだ知らないことばっかだなって」
一瞬こわばった背中に声をかけて、回された腕に手を重ねた。
「たまには、ゆっくり話そうか」
 返事の替わりに腕に力がこもったのを感じた。深く息を吐き出すタイミングを見計らって、身体の向きをくるりと変えて裸の胸に顔を寄せた。
「はー、やっぱすべすべで気持ちいいなー」
「城之内っ」
「オレの方が身体能力は高いんだから、気ぃ抜くなよ。まあ今日はこれでいいから…海馬?」
見上げると真っ赤な顔でふるふると震え、涙混じりの青い瞳と目があった。腰の奥にズンと来るものがあった。
「それ反則」
「反則はそっちだ!離れろ」
 城之内はぽいっとベッドの端に投げられた。
海馬は掛布団を剥ぎ取って身体に巻きつけた。
 心底わからないという顔をしていると、盛大なため息と共に、まさか気付いていなかったのかと掛布団の中からつぶやきが漏れた。
「…何が?」
「今迄自分がうまいと思っていただろう」
 この状況では他に思いつく言葉がなくて、だいぶ怒っているらしい男におそるおそる話しかけた。
「ええとエッチのこ」
言い終える前に枕がクリーンヒットした。

 ふすまを開ける音がして、しばらくするとYシャツを着た海馬が正座していた。
流石にジャージにシャツは入れなかったために、座ると下が素足であるかの様な、ある種マニアックな服装に城之内はゴクリと唾を飲み込んだ。
「貴様は様々なことに欲情するのだな」
「だって今の格好、彼氏の家にお泊りみたいじゃん」
 海馬は視界に入る部分だけでもと視線を落としたが、今ひとつ納得できず、憮然とした表情を崩さなかった。
「オレはどうしたらいい?考えたけど分かんないよ」
 考えたのは海馬も同じだった。シャツを着ながら日常をかえりみて、また思い違いをしていたことに気付いてしまったからだ。
 そろりと近づいてくる城之内の手を取り、他のことはするなと釘を刺して、胸に手をあてさせた。
「これは平気だ」
反対の指先で器用にボタンを外すとシャツの前を開いた。現れたVネックインナーの上からも同じことを繰り返した。多少の刺激は感じるが耐えられる程度だった。
「これも」 
 深呼吸を繰り返す海馬に戸惑いながらも、なすがままになっているとインナーを持ち上げられて、素肌の上に導かれる。とたんに目の前の身体が震えて、鼻にかかった甘い声が漏れた。
 城之内は身体を支える為に近付こうとしたが、海馬の腕に阻まれた。
「動くな」
「海馬?」
「オレは極度のくすぐったがりだ。だから貴様の動きに翻弄されるのだろうと思っていた」
 腕を離し再び正座をして向き合った。乱れた衣服を多少直し襟足をかき上げた。しかしその間視線を合わせることだけは、どうしてもできなかった。

「思ってたってことは、今は違うのか」
 先に気を取り直した城之内が、言葉尻を捕らえて尋ねる形になった。
「ふん、情けないことにな。さっき気付いた。海馬の家に引き取られてから、着替えは周りの者に任せなければいけなかった。耐えて、慣れた筈だった」
「それじゃ」
 身体の前で腕を組むと、目を瞑ったままぽつりと一言。
「貴様限定だ」
 飛びついてくる体を、もう避ける気はなかった。
「城之内っ」
「だってうれしいじゃん。そんな熱烈な言葉、初めて聞いた」
「なぜ膝の上に乗るんだ!」
 正座をしている海馬の上に跨って、頭にぎゅっと抱きついた状態だった。
「たまには上から海馬を見たいからだよ」
「上から?」
 拘束が緩んだので見上げると、明るい髪と琥珀の瞳がきらきらと輝いていた。
「横になっても見られるけど…うまく言えないけど、ぴかぴかしているところが見たい」
 珍しく城之内から唇を重ねた。
 2人とも口元は笑ったままだった。
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posted by ニノ at 16:26| 【遊】お題_18

深夜 1

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「だいたい、なぜ終わらせておかない」
「バイトの後帰ってくると、布団直行って感じだから。あ、その辺こないだ、こぼしたから足置くな」
「何を?」
「ソースだったかな」
「………」
 自宅だというのに、真っ暗闇で手探りの中進んでいた。
事故による地域一帯の停電。月明かりもない夜だったので、時折通りかかる車のヘッドライトと携帯を頼りにするしかなかった。
「じゃりじゃりいってるけど、もう手遅れだった?」
 後ろから付いてきていた気配が消えると城之内は慌てた。
相手は白い服を着ているので、どうにか居場所を確認できた。踏むなと言った箇所を避けて、座り込んでいるのが見えた。
「確かこっちに懐中電灯が…」
うろ覚えに仕舞い込んだ物を手に取ると、スイッチを入れた。やっと部屋に明りが灯った。
それを床に置き待ち人を振り返ると、首から上が見つからなかった。一瞬で血の気が引いていくのが分かったが、懐中電灯を持ち上げ照らしてみれば、たんに顔を深く伏せているだけだった。
「海馬?」
 声を掛けてもピクリともしないため、回り込み顔に手を近付けてみるときちんと呼吸はしていた。深く静かな音で、熟睡しているのだと分かった。
 傍らに置いていた携帯が振動した。自分のものは電池切れだった為、それは海馬の携帯だった。メール着信の点滅だと分かったので、相手を確認すると弟のモクバからだった。
 メールだと肩を揺すっても一向に起きる気配がなく、まるで電源が落ちた様に動かなくなっていた。
今迄こんなことはなかったので、城之内は茫然としてしまった。
最後の頼みと携帯を掴んだ。
「モクバ」
「城之内?兄サマと一緒なの」
「そう、なんだけどお兄サマが起きなくて困ってんだ。熟睡じゃなくて、なんだっけ…昏睡か、突然動かなくって」
「どこにいるの?!おまえ、兄サマを変なとこに連れてくなよ」
 強い語気にたじろぎながらも、返答した。
「家、オレんち。今日事故があっただろ、停電で真っ暗なんで一緒に来てもらったんだけど」
「クレーン車が引っかけたやつか。あれ城之内の家あたりなんだ」
「関係あったみたい。なあ、これだけ大声で話してても海馬起きないんだけど?徹夜続きだったとかなのか」
 電話の向こうで、大きく息を吐くのが分かった。
「徹夜じゃないよ。兄サマならほっといて大丈夫」
「ほっとくって…モクバ?」
「だから、朝になったら自然と起きると思うから、理由は本人から聞いて!!」
大きく叫んだ後、モクバから通話を切られた。甲高い声に耳をキーンとさせられながら、城之内も携帯を閉じた。

 何度か名前を呼んで身体ごと揺すったが、やはり反応はなかった。春とはいえ、深夜床の上で眠らせたら風邪を引かせてしまいそうだ。意識のない人間の身体はずっしりと重たい。
迷ったが、白いスーツの上着とスラックスを脱がせることにした。お世辞にもキレイとは言えない床を引き摺っていったら、汚れるだろうと思ったからだ。
「せーとー、起きろよ」
どうにかベッドに横たわらせて、ネクタイも外してみたが、無反応のままだった。
 城之内はそっと海馬の前髪をかき上げると、反対の指で鼻筋、唇となぞりながら鎖骨辺りまで下りていった。そこで一呼吸つくと、腕をどけてシャツの胸に頭を乗せてみた。
トクントクンと心臓の拍動が聴こえて、暗闇では動きを見せない胸もきちんと上下に揺れていることが分かる。
 このまま眠ってしまおうか、そんな誘惑が浮かんできたが振り払って身体を起こした。
 本当は明日提出の課題を家から持ち出し、海馬邸で見てもらう予定だった。停電というアクシデントがなければ、家でも構わなかったのだが。
 モクバの言葉のとおり朝になれば起きてくれるなら、それからでも見て貰った方がいい。決意をすると机の上の書類をごっそり掴み、とりあえず居間に向かった。

懐中電灯の明かりは細くて、目的の用紙を探すだけでも骨が折れた。クラスと名前だけは記入して筆記用具を置くと、床に残したままだったスーツが目に付いた。先にスラックスをハンガーに吊るして、上着を手に取るとカラフルに点滅して存在を主張しているスマートフォンが胸ポケットにあった。
 最近それを掌に載せて操作をしている海馬の姿を良く見かけていた。
記憶の中の指先の動きをまねて、つるりとした表面を撫でると、操作画面が現れた。
「ロック外れたのか…。オレ、凄い?でも中見ちゃ悪いよな」
元の場所へ戻そうとした時に、スケジューラーが立ち上がって今日の予定を表示した。
『 密会 』
城之内は息を飲んだ。


 課題はあきらめ部屋に戻って隣に横になったが、「密会」という言葉が駆け巡って深くは眠れなかった。気付けば外は大分明るくなっている。海馬が身じろぎをしたので、その様子を見守った。
 日が射して顔を照らしていくと、ゆっくりと瞼が開いた。天井と周囲を見渡して城之内を見つけると、ぼんやりとしたまま笑い、頭を引き寄せておはようのキスをした。

「真の暗闇になると熟睡してしまう癖があるらしい」
 居間に移って温かい紅茶を受け取りながら、海馬が話し出した。
 それはある時偶然起ったという。
ガレージで先に明りを落としてしまい、モクバの手を握ったまま座り込んで眠ってしまったことがある。
クローゼットで探し物をして、誤って照明のスイッチを切ってしまい深く眠ってしまったことも。
「今迄はモクバとだけだな。安心している相手とだけか。…昔々は親の前でそうだった気がするな」
「あ、それでなんかモクバ不機嫌だったのか」
 自分だけの特権の様なものだったのだろう。
 モクバは2人が恋人同士だと知っている。それでも今迄こんな事態に陥ったことはなかった。
 城之内が極端に暗闇を嫌うせいで、どちらの家にいても暗闇になることはなかった。
海馬の部屋なら、しようと思えば真っ暗闇にもできる。モクバはそこまで城之内が暗闇を恐れているとは知らないだろう。
「病気じゃなくて良かった。最初、怖かった」
 顔を上げるとさぼるなと怒られるので、口だけを動かした。
 分かる部分だけでもと用紙を埋めていた城之内の髪を、海馬が撫でた。驚いて目線を上げると、涼しそうな顔で端末を操りニュース記事を読んでいた。

 海馬は夕べのことを思い返していた。
 玄関で靴を脱いだところで記憶は途切れている。次は朝で城之内と横になっていた。
 この様な記憶の途絶え方は、先程の体験でしか説明がつかない。
病気だと思ったことはないが、心配してくれる口調に一度調べてもいいのかもしれないと思えて、金色の頭を撫でたくなった。
 スーツをきちんとハンガーに掛けたり、お茶を淹れるのがうまかったりと、意外とまめであることは付き合うまでは知らなかった。
 しかしなぜこの男と一緒にいて、安心できたのかがわからなかった。
 幸い夕べは何もされていないようだが、この家に来てまっすぐ帰れたためしがなかった。
ことあるごとに触りたいと寄ってくる為、着せられている膝上のジャージや薄くて袖の短いパーカーは、素肌部分に触れたかったなどの理由があるのだろうかと勘繰ってしまう。
 そこまで考えて、海馬は思い違いに気付いた。
 城之内はモクバと同じく、それ以上に身体を触れあわせている関係だった。もちろん自分が許さなければできないことで、一方的な行為ではない。
城之内が体を心配してくれる様に、気になったから停電だという家に一緒に付いてきたのだ。
 …欲情するタイミングが異なる為に警戒していただけであって、不安など元から抱いていなかった。
 朝からこんな考察をしていることに眉をしかめていたところへ、城之内から、とりあえずできたという声があがった。
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posted by ニノ at 15:57| 【遊】お題_18